テーマの設定理由

〈テーマに関する子どもの興味関心など〉
 子どもたちは、庭や散歩先でダンゴ虫を見つけては、その発見を驚き、喜ぶ姿が連日みられていた。朝も夕方も飽きずにダンゴ虫を捕まえていた子どもたちから「ダンゴ虫、飼いたいな」という声が聞かれた。

 身近な生き物や自然に興味をもち、驚きや発見といった好奇心をはたらかせて動く経験をしてほしいという思いから、子どもたちと一緒にダンゴ虫の飼育を始めることにする。

活動スケジュール

活動内容/日付 時間 年齢/人数
ダンゴ虫の飼育を始めよう 5月/午前中 4・5歳児クラス
ダンゴ虫の生態を知ろう 5月/午前中 4・5歳児クラス
ダンゴ虫の絵本を読もう 6月/午前中 4・5歳児クラス
ダンゴ虫のエサの実験をしよう 6月/午前中 4・5歳児クラス
ダンゴ虫の脱皮と赤ちゃんの誕生 7月/午前中 4・5歳児クラス
ダンゴ虫との再会 12月/午前中 5歳児クラス

虫 :ダンゴ虫

①ダンゴ虫の飼育を始めよう

活動のために準備した素材や道具、環境の設定

  • ダンゴ虫の飼育のページ(図鑑)に付箋を貼っておく
  • 天気の良い日に庭に出て、図鑑をみながら飼育の準備をする

準備するもの  ・図鑑 飼育ケース スコップ

活動の内容

  • 図鑑をみながら飼育に必要なものを集める
  • 庭にいるダンゴ虫を捕まえる

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 「はやくやろうよ!」と庭に出ると、大人を催促する。ダンゴ虫の飼育をとても楽しみにしていた様子。大人と一緒に図鑑にのっている写真を見ながら飼育に必要なものを集める。保「この茶色いのはなんだろう」子「つちだ!」保「土はどこにあるかな」子「はたけだ!」と自ら気づくと、すぐに畑に向かいケースに土をいれていく。「これでいい?」と保育者に確認しながらすすめていく。土や石、葉をいれて〈ダンゴ虫のおうち〉(飼育ケース)が完成するととても満足げな表情だった。

活動の様子が分かる写真

 

 

振り返り

 平仮名を読むことができなかったため、大人と一緒に図鑑にのっている写真を見ながら必要なものを理解していく。子ども自身が気づけるように、大人は問いかけるように配慮した。大人が参加しながらも、自分たちで進めている感覚がもてることを大事にしていきたい。

虫:ダンゴ虫

②ダンゴ虫の生態を知ろう

環境をデザインする

  • ダンゴ虫の様子を子どもたち同士が共有できるように、室内でも観察できるようにする
  • 「だんごむしのずかん」(図鑑のダンゴ虫のページだけをコピーしたもの)をつくる

準備するもの  図鑑 手作りのダンゴ虫図鑑  飼育ケース  スコップ 

活動の内容

  • ダンゴ虫を観察する
  • 〈ダンゴ虫のおうち〉を作り直す

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 登園すると、「だんごむしは?」とダンゴ虫に会えるのを楽しみに登園している姿。前日の夕方に、ダンゴ虫のケースに水を入れすぎてグチャグチャになってしまったことを知ると、少しショックを受けた表情だが、ダンゴ虫が生きていたので納得してくれる。                   

 グチャグチャになってしまったため、子どもたちと作り直すことにする。「ずかん、もってきていい?」と言って、自分たちで図鑑を取りに行くと、それを見ながら飼育に必要なものを保育者と一緒に集める。自分たちだけでやるより、保育者に見ていてほしい姿があった。

子どもたちの姿

 

 

振り返り

 前日に、飼育ケースに水をいれすぎる(土をしめらすつもりだった)という思わぬハプニングがあった。それがきっかけで、ダンゴ虫が岩に身を寄せ合っている姿を確認できた。ダンゴ虫は水が苦手だという生態を知ることに繋がる。子どもの失敗も肯定的に捉えて、次につなげていけるようにしていきたい。 

 二度目のダンゴ虫のおうちづくりとなったが、すぐに図鑑を持ってきて、作り直す姿があった。字が読めなかったり、正しくできているか確認するために常に保育者にそばにいて欲しい様子だった。保育者が子どもの気づきや発見を一緒に喜んだり、子どもの行動の一つ一つを認めることで、子どもたちも安心していろんな興味を広げていけるのだろうと思う。

虫:ダンゴ虫

③ダンゴ虫の 絵本を読もう

活動のために準備した素材や道具、環境の設定

  • 『ダンゴ虫』 が出てくる 絵本を 数冊絵本棚に 用意する 。

準備するもの  絵本

活動の内容

  • 『ダンゴ虫』 が 出てくる 絵本 を読んだり、 読み聞かせをする 。
  • 絵本をヒントに、ダンゴ虫 のエサについて興味を広げる 。

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 ダンゴ虫が出てくる絵本を何冊か絵本棚に置いておくと、子どもたちも興味を持ち 、絵本を 手に取って読んでいる。『ごはんだよ!だんごむし』という絵本の読み聞かせをすると、 ダンゴ虫の飼育を積極的にやっている子は、絵本が始まると「しずかに!」など集中して聞きたい姿があった。飼育には直接、関わっていない子もよく聞いていて、ページをめくるごとに“食べた”と驚いている。絵本のなかで一番盛り上がったのは、ダンゴ虫のウンチが描かれているページ だった 。「ウンチしてるよ!!」「ウンチするの?!」とざわついていた。 絵本を読み終えてから、「ダンゴ虫って、ほんとうに○○食べるのかな」と問いかけ、「実験してみる?」と聞くと、「やりたい!!」と勢いよくこたえていた。

活動の様子が分かる写真

 

 

振り返り

 職員も、ダンゴ虫が雑食であることを絵本を通じて知り、子どもたちと一緒に“ほんとうにいろんなエサを食べるのか”実験をしてみたい気持ちになった。

 どんなエサの実験をしたいかを聞くと、「イチゴ」と答える子が多かった。自分の好きな食べ物を、ダンゴ虫も食べるのかとワクワクする表情で、とても楽しみにしていた。他にも、 海苔 や煮干し など絵本を参考に考えていた。

虫 :ダンゴ虫

④ダンゴ虫の エサの実験をしよう

活動のために準備した素材や道具、環境の設定

  • 透明な容器を 4 個用意 する。
  • 野菜などを小さくカットしておく。

準備するもの  小松菜・人参・ほうれん草・煮干し・イチゴ・ 透明な容器

活動の内容

  • 透明な容器にダンゴ虫 や土を入れて、環境を整える。
  • 子どもたちが自分の食べさせてみたいエサを入れて、観察する。

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 それぞれ、どのエサを担当するのか子ども達同士で分担している。透明な容器にエサとダンゴ虫をいれると目を輝かせながら「できたよ」と保育者に伝えている。周りにいた子も気になって様子を見ている。食べているかは不明だが、エサに登っているダンゴ虫をみて「食べてる!」と盛り上がっていた。お昼寝後に確認してみると、食べ跡がしっかりみられ納得していた。イチゴは食べた様子が見られず、イチゴを担当していた子は「たべなかった」とがっかりしていた。

活動の様子が分かる写真

 

 

振り返り

 ダンゴ虫の飼育のなかで要になる活動だと思っていたので、いろんな種類の食品で実験をすることが出来て良かった。絵本で知ったことを、実際に自分でやって確かめることができ、経験を通じて知識を獲得していく体験になったと思う。面白い・楽しい体験をもとに、ダンゴ虫への興味や親しみも高まったように感じる。「ダンゴ虫って○○たべるんだよ」と友だちや保護者に教えている姿もあり、子ども達の会話から興味の輪が広がっていくと良い。

虫 :ダンゴ虫

⑤ ダンゴ虫の 脱皮と赤ちゃんの誕生

活動のために準備した素材や道具、環境の設定

  • 虫眼鏡を用意し、子どもたちが観察しやすいようにする。

準備するもの 
・虫眼鏡

活動の内容

  • 脱皮しかけているダンゴ虫の観察
  • ダンゴ虫の赤ちゃんの 観察

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 絵本を読んだりエサの実験をしたことで 、興味を持った子どもが増えていき、毎日、飼育ケースのダンゴ虫の様子を観察していた。その中で、 脱皮しているダンゴ虫を見つけた子どもたち。大きな声で驚きをあらわにしている。子どもたち同士、声をかけ合うと次は保育者のところに脱皮しているダンゴ虫を見せに来る。「 よくみつけたね 」 と声をかける 。
別の日には 、ダンゴ虫の赤ちゃんを発見する。すぐに、「だんごむしのあかちゃん、うまれたよ!」と保育者に知らせる。小さ 過ぎて わからない子もおり保育者 と一緒に探して、 「これだよ」と教えると「ほんとだ」とわかったようだった。

活動の様子が分かる写真

 

 

振り返り

 この活動をするまで、保育者自身もダンゴ虫についてよく知らなかった。脱皮している姿や赤ちゃんのダンゴ虫を見たことがなく、その姿に出会えることまで予想していなかったため、その場面に遭遇した子どもたちの驚きや喜びを一緒に感じることができた。

 脱皮している姿や赤ちゃんなど、いろんなダンゴ虫の姿を見れたことでより興味が深まったように感じる。大人も一緒にワクワクしながら子どもの展開を見守っていくことができ、とても楽しかった。多くの子が参加していたが、発見の驚きや喜びをもっとクラスのみんなで共有できるような保育をつくっていきたいと思った。

虫 :ダンゴ虫

⑥ダンゴ虫との再会

活動のために準備した素材や道具、環境の設定

  • 調理室にエサ 葉物野菜 をもらいに行く

準備するもの 
・「だんごむしずかん」・ 飼育ケース

活動の内容

  • 春 に調べたことや気づいた こと など を思い出し ながら 、 ダンゴ虫にエサをあげる

活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関り

 冬の庭でダンゴ虫を発見すると、カップに入れて「だんごむしがいた!」と保育者に報告する。冬だからかあまり活動的でないダンゴ虫を見て、保育者が「あんまり元気なさそうだね」と言うと、「ふゆだから、えさがないんじゃない?」「えさ、あげたい!」と言うので「ダンゴ虫は何を食べるんだっけ」と聞くと、 「いちご」と答える。「イチゴは食べなかったんじゃない?」と言うと「きゃべつ!」とエサの実験を思い出しながら 2 人で考えている。「調理さんに聞いてみようか」と声をかけ、保育者と子ども 2 人で調理室に行く。自分たちで「 キャベツ ください」と声をかける。キャベツをもらうと、興奮気味にダンゴ虫にエサをあげ ていた 。

活動の様子が分かる写真

 

 

振り返り

 図鑑で調べた時に冬はダンゴ虫は冬眠するということが分かったが、まだ庭にダンゴ虫がいたことに驚いた。暖冬だから見られるのか。子どもたちはダンゴ虫の発見を喜んでおり、本当にダンゴ虫が好きなのだなと感じた。

 ダンゴ虫のエサを聞いたとき、子どもたちは「いちご」と即答していた。イチゴは食べなかった食材だが、一番印象に残っていたのがその食材だったのだなと思った。その後、2 人で思い出しながら実際に食べた食材を言っていた。エサの実験も友だちと一緒に取り組めたことで、一人だと分からないことでも友だちと一緒に思い出せている感じがあった。